カイコが作る二酸化チタン入りの絹

また生体とナノ粒子つながりでこんなものがありました:

カイコ使い光触媒生産・長野のベンチャー企業
http://www.nikkei.co.jp/news/tento/20040712AT3B1000110072004.html

 ベンチャー企業のエイチ・エー・エル(長野県松本市、伊藤一郎社長)は、
カイコを利用した光触媒材料の生産技術を開発した。カイコに特殊な飼料を与
え、光触媒機能のある繭を作らせる。光触媒材料は有害な有機物の分解や抗菌、
脱臭といった効果があり、インテリア用品の原料などとして利用できる。

 特に、シックハウス症候群の原因とされる有害物質、ホルムアルデヒドやト
ルエンを無害化できることから、室内に置く照明のかさなどへの利用を想定。
抗菌性が求められる衣料品や化粧品への活用も見込んでいる。生物を使った光
触媒材料の生産は珍しい。カイコの活用には、繭から取れる生糸をそのまま製
品の原料として使える利点がある。

 飼料は光触媒物質の原料となる二酸化チタンをセラミックスで覆い、シクロ
デキストリン(環状オリゴ糖)と結合させたもので、与える期間は3―4週間。
オリゴ糖の形状を変えることで分解する物質が選べる。 

食べさせた餌の中の光触媒粒子(セラミックスで被覆された二酸化チタン)を
いかにカイコに吸収させて絹に出させるかがこの技術のキモですね。
光触媒粒子をシクロデキストリンと結合させるとそれがうまくいくようですが、
どういう機構でそれがカイコの体内をめぐるのでしょうか?

光触媒粒子とシクロデキストリンの結合」もどうやってやってるのかな?
シクロデキストリンって分子(直径1nm以下)を包接(包み込む)するけど、
光触媒粒子はどうがんばっても3nm以上はありそうだから包接できなそうだし。
(参考: http://www2d.biglobe.ne.jp/~chem_env/chem6/cd.html)
、、、と思ったら、シクロデキストリンでナノ粒子をキャップして保護する
ことができるという報告はあるようです。
(参考: http://www.ims.ac.jp/organization/tsukuda_g/saikinn.html
http://www.nanonet.go.jp/japanese/mailmag/2003/029b.html)

こちらにも同じ記事の解説がありました。読者によるコメントがたくさんつい
ていて面白いです。

蚕が生み出すハイテク繊維
http://slashdot.jp/science/04/07/11/0719246.shtml?topic=70

awajiya のコメント
     : 
それより先に,もともと絹繊維は,紫外線に当たると黄変して
ボロボロになるから,太陽光で干さない方が無難ですな.
ぼくも,それを知らずにシルクのシャツを駄目にしました.
高かったのになー.

、、、絹って紫外線に弱いのか。
調べてみたら絹のタンパクは紫外線を吸収して分解、黄変するけど衣類の場合は
それで肌に届く紫外線が減るからUVカット効果にもなるということですね。
(参考: 絹の素材特性(日本絹業協会): 絹の性質について顕微鏡写真とともに解説してあります)
光触媒は紫外線に当たらないと効果を発揮しないから、この新繊維は黄変や
繊維の寿命をあまり気にしないような状況で使うのかな。

まぁ同じ手法で他の機能を持ったナノ粒子を取り込めるだろうし、
今後の展開に期待です。