単層カーボンナノチューブを金属型と半導体型に分ける技術

SWCNT:金属型と半導体型の効率的な分離法を開発
http://mainichi.jp/select/science/news/20080227k0000m040036000c.html

 産業技術総合研究所茨城県つくば市)は26日、単層カーボンナノチュー
ブ(SWCNT)の製造段階で、1対2の割合でできる金属型と半導体型につ
いて、従来より容易に短時間で分離する方法を開発したと発表した。効率的な
分離法の開発は、SWCNTの実用化へ向けた大きな課題だった。
 SWCNTは炭素原子が六角形に連なった直径0.7〜4ナノメートル(ナ
ノは10億分の1)程度の筒。軽量で強い新素材で、金属型は太陽電池や液晶
ディスプレーなどに使う透明導電膜の材料など、半導体型はナノサイズの半導
体などへの応用が期待されている。
 産総研ナノテクノロジー研究部門の研究グループは、SWCNTの水溶液を
作成。分子レベルの細かな網目構造を持つゲル状物質の中に閉じ込めて電気を
流したところ、電気によって動きやすい金属型のSWCNTだけがゲルから飛
び出し、30分ほどで分離に成功した。遠心分離器を使う従来の方法は、12
時間もかかるという。
 グループの田中丈士研究員は「原理が分からない部分が残るが、原理の解明
と、さらに効率的な分離法の開発を進めたい」と話している。【石塚孝志】

以下はより詳しい解説です。

金属型と半導体型のカーボンナノチューブを高い回収率で分離
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2008/pr20080226/pr20080226.html

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」
という)ナノテクノロジー研究部門【研究部門長 横山 浩】自己組織エレクト
ロニクスグループ 片浦 弘道 研究グループ長、田中 丈士 研究員は、ゲル電
気泳動の手法を用いて、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を金属型SWCNTと
半導体型SWCNTに簡便に分離することに成功した。
	:
  今回、産総研は、アガロースゲル電気泳動法を用いることで、簡便に金属型
と半導体型のSWCNTを分離できることを世界に先駆けて発見した。特に、SWCNT
を前もってゲルに閉じこめた状態で電気泳動を行うという手法を開発し、ほぼ
全てのSWCNTを金属型と半導体型に分離することができた(図1)。
	:
 回収率の向上のため様々な条件での分離精製を検討して、SWCNTを水溶液試
料とするのではなく、あらかじめSWCNTを分散状態で含ませたゲル(SWCNT分散
ゲル)を調製し、その試料に対して電気泳動を行うと分離効率が劇的に改善さ
れることを発見した(図1)。つまり、SWCNT分散ゲルに対して電気泳動を行う
と、金属型SWCNTだけが移動して、はじめに含まれていたゲル部分から抜け出
すが、半導体型SWCNTは、最初の試料位置から移動しないという現象が起った。
結果として電気泳動に使用した試料のほぼすべてを金属型と半導体型に分離す
ることが可能となった。通常のゲル電気泳動では分子量や長さの違いにより試
料が分離されるが、SWCNTに見られる現象は全く異なる原理によるものと考え
られる。
 さらに、平均直径や直径分布の異なるSWCNT試料について、SWCNT分散ゲルを
用いた電気泳動による分離を行なった(図3)。これらの場合でも金属型と半
導体型のSWCNTに分離することができ、直径分布に対応した異なる色調をしめ
すSWCNTを得ることができた。このことは、金属型と半導体型の分離が、様々
な種類のSWCNTに対しても有効であり、この手法の汎用性が高いことを示して
いる。

アガロースゲル(寒天)を使っているんですね。
通常の方法で水溶液で電気泳動を行うと回収率は10%以下だそうですが、
ゲルにあらかじめ SWCNT を閉じ込めておくのがポイントのようです。
この方法だと大量に処理できますね。

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