遺伝子操作で「特定の相手を求める気持ち」を作り出す

id:alchymiaさんの記事に紹介されていた Nature の論文が専門家のインタビュー
とともに詳しく載っていました。やはり反響が大きかったようですね。

浮気:脳の遺伝子操作で止まる ネズミの実験
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20040722k0000e040071000c.html

■一緒にいる時間が倍増

 注目の論文は、米アトランタ・エモリー大のミランダ・リム教授らによるも
ので6月17日号の同誌に掲載された。

 ほ乳類には雄が複数の雌と交尾する「乱婚型」と、ペアボンド(つがいのき
ずな)によって両親で子供を世話する「一夫一妻型」があり、一夫一妻型は5
%足らず。リム教授らは今回の実験で、一夫一妻型のプレーリーハタネズミと、
乱婚型のアメリカハタネズミを使用した。

 この2種類のネズミについては▽プレーリーハタネズミの雄は「バソプレッ
シン」という脳内ホルモンが前脳腹側領域で働き、ペアボンドの形成をつかさ
どっている▽プレーリーハタネズミは前脳腹側領域でバソプレッシンの一つで
あるV1aの受容体発現量が、ハタネズミより多い−−ことが既に分かってい
る。そこで実験では、V1a受容体の遺伝子をアメリカハタネズミの雄の前脳
腹側領域に入れて受容体の量を増やしたところ、ほかの領域に入れた同種の雄
などと比べ、パートナーの雌と寄り添うようにして一緒にいる時間が2倍以上
長かったという。

 論文は「一つの遺伝子が脳の特定の領域に出現するだけで、種の社会的行動
に明らかな影響を与えた」と結論づけている。

西森克彦・東北大教授(分子生物学)と長谷川眞理子・早稲田大教授(動物行
動学)のコメントで further understanding がしやすいと思いました。
でも何か読んでいてひっかかるのはどこだろうと思って考えてみると、
人間との比較や浮気という言葉の使い方でした。

人間の場合、特定の相手との付き合いを求めずにナンパなどで毎回相手を
変える人をたまに見ますが、こういうのが「乱婚型」ですよね。
でも人間でよくあるパターンは、特定の相手との結びつきを求めつつ、
たまに違う相手を求めるというのもでこれが「浮気」。

今回わかったことは、
・○ V1a受容体を(特定の場所で)増やす → ペアボンドを生成させることができる
・× V1a受容体を増やす → 「違う相手とたまには浮気したいな」と思う気分がなくなる
ということですよね?
だから人間にこの遺伝子操作をしても、(これまでナンパにしか興味がなかっ
た人が結婚もするようになって)配偶者の浮気に困る人が増えるだけなのでは、、、

論文の方は読んでいないのですが、新聞記事では「パートナーの雌と寄り添う
ようにして一緒にいる時間が2倍以上長かった」とありますが、他の雌と性交
しなくなったということではなさそうなので(突っ込み歓迎)。

それにしても、心というか気持ちを遺伝子操作で変えられるんですねぇ。
化学物質の投与で変えられるのは自分の中で自然なことだったんですが、
こっちはちょっとびっくりしました。